鍼灸師としての第一歩と進路の決断
国家試験が近づくにつれ、卒業後の進路について真剣に考えるようになりました。
地元の鍼灸院や整骨院で働くという選択肢もありましたが、
正直、私はそこに強い魅力を感じてはいませんでした。
やはり心の奥底にあったのは、「大学病院で鍼灸治療に携わる」という憧れでした。
そこで、関東圏の大学病院で鍼灸師を募集しているところがないか、
パソコンで検索を始めました。
そんな中、ふと目に留まったのが東京都郊外にある一つの鍼灸院の求人情報でした。
「なんとなく、気になるな…」と思い、詳しく見てみると、
そこでは保険ではなく完全自費診療で、多くの患者さんが来院しており、
しかも非常に幅広い症状に対応していると書かれていました。
内容を読んでいくうちに、私の中で直感的に『ここだ!』と強く感じたのです。
まだ大学病院の試験も控えている状況ではありましたが、
「考えるよりまず行動」とばかりに、その鍼灸院に見学を申し込んでみることにしました。
そして、実際に院内を見学させていただいた日
私は、今でも忘れられないほどの衝撃を受けました。
一日に来院する患者さんの多さ、老若男女を問わず訪れる人々、そして何より驚いたのは、 教科書でしか見たことのなかったような、さまざまな病気・症状の方々が、鍼灸治療を真剣に受けていたことです。
「鍼灸治療=年配の方のためのもの」という先入観は、一瞬で吹き飛びました。
さらに、私の心を強く揺さぶったのが、院長(私の師匠)の施術スタイルでした。
スピーディで的確、次から次へと患者さんに対応するその姿勢。
そして、短い会話の中にも込められた、深い臨床的思考。
「なぜその治療法を選ぶのか?」
「どんな考えに基づいてこのアプローチなのか?」
その一つひとつが気になって仕方がありませんでした。
そして私は、迷うことなく「ここで学びたい」と思い、就職を決意しました。
大学病院の試験も受けましたが、最終的には辞退し、この鍼灸院で働くことを選びました。
そんな私に、見学後に師匠が放った衝撃のひとこと
「一ヵ月、無給で働いたら就職を認めるよ。」
「…大丈夫だろうか」と迷いもありました。
私は覚悟を決めました。
ここからが、私の鍼灸師としての本当の第一歩です。