今年は、例年よりも早く梅雨の季節となりました。
5月の後半から天候不順と朝晩の気温差も重なり、定まらない天候が続き
「じめじめ」・「べたべた」・「倦怠感」・「めまい」・「神経痛」等
様々な症状が出ている方が多くみられます。
すっきりしない天候のまま、季節に順応する間もなく
変化するため身体的・精神的にしんどい日々が続く可能性があります。
梅雨の季節に最も負担をかける要因として「湿気」が影響します。
高湿度となる環境変化は、人体に様々な不調をもたらす「邪気(じゃき)」となり
体の負担として襲いかかります。
湿気の邪気「湿邪」にやられますと、体の循環障害が発症しやすくなるとされています。
・体内の水の流れが悪くなるため血液循環の悪化
・汗が出づらくなるため体内に余分な水分が溜まりやすくなる
・気圧の低下により内リンパ液の流れが悪くなりやすい
・体内の汗が出づらい状況となり、体内の熱を発散することができないため
過剰に冷たい物を欲するようになり体温を下げ血液の流れがわるくなる。
夏の養生
夏の3ヶ月(5月6日立夏~8月8日立秋)を蕃秀の季節といいます
蕃とは…茂ること・盛んであるという意味
秀とは…華やかであり・美である意味
↓
夏は…自然界の植物が生い茂る季節、天地陰陽両方が盛んに交互することで
植物は、花を咲かせて実をつけます。
人間も自然界と同じように、体内の陽気も活発に動きます。
花のようにすべてを外に出すようにするため、体内の老廃物や毒素を
汗とともに皮膚を通じて、外に排泄・放散できるような季節です。
しかし、現代では時代の変化とともに、便利な生活を求めた結果、体にとって
害になる要素が溢れてしまっている現状です。
この時季の気候の特徴は、気温と湿度が高いので「暑」と「湿」と
いうことになります。気温と同様、湿度も快適感に影響を与える大きな要素です。東洋医学では、病気を引き起こす外的な要因として「六淫」という
ものを想定しています。つまり、暑すぎたり、寒すぎたり、空気が乾燥したり、
湿度が高かったりという、環境の変化に私たちの体が対応しきれなくなった時、
それが病気の原因となると考えられています。「暑」と「湿」もこの「六淫」の
中の一つで、特に梅雨の時季には最も勢力が大きくなります。
次に「暑」と「湿」の性質について詳しく説明したいと思います。
「暑」…暑は夏の主気であり、五行では「火」、五臓では「心」と関係
があります。暑邪は、陽の邪気であり、盛長だけにみられ、生気を消耗させます。
・暑は陽邪であり、その性質は炎熱
体内に、暑邪が侵入して炎熱が盛んになると、高熱が出たり(夏風邪)、顔が赤くなったり、心煩(胸部になんだかもやもやして不快で、落ち着かない状態)などの症状が現れます。
・暑は上昇し、発散する
暑邪が人体を犯すと、多くは気の部分に直入し、腠理(毛穴)を開き、汗が
多くなる。汗が多く出すぎると気と津液を消耗し、口が渇く・尿が短く少ない・
多汗・甚だしい場合は、突然気を失って倒れ人事不省(意識がなくななること)
に陥ることもあります=熱中症の症状
・暑は多くの湿が混入する
暑季は、気候が炎熱する以外に雨や湿気が多く、空気中の湿度が増加します。
そのため、人体が暑邪を受ける時は、湿邪を伴うことが多く、
四肢の倦怠感・胸悶(胸苦しいこと)・悪心(吐気を催すが胃の内容物は吐けず、酸水のみを吐き出す症状)・嘔吐・下痢など湿の停滞による症状が現れます。
「湿」…湿は、長夏の主気とされています。しかし、この考えは中国大陸の
中原地方(黄河中央部流域)の気候条件を前提にしたものであり、日本では
梅雨や秋の長雨の時季に邪気となることが多いです。
五行では「土」五臓では「脾」と関係があります。
・湿は陰性の邪気で、人体の下部を犯しやすい
湿は、水に似て下に流れ冷たい性質があります。そのため、湿邪が人体に侵入
すると陽気を損傷し、下半身に症状が多く見られます。
帯下・下痢・水腫・★淋濁等の症状が現れます。
★淋濁とは
淋証…中医学の病名で、
淋(排尿時の痛みをはじめとする、頻尿・残尿感・排尿困難を言い)
膀胱炎・腎盂腎炎・泌尿器系の結石などこれに当たります。
泌尿器系の疾患には、湿の関係があると考えられています。
・湿は重く、停滞する(重濁性・粘滞性)
湿邪を受けることにより、常に頭が重く何かに包まれているようなど
全身が重く四肢がだるい等の症状が見られます。
また湿邪が経絡・関節に滞ると、経絡の流中に痛みが出たり、また関節が痛み腫れることもあります。これを★湿痺もしくは着痺と称されます。
★痺…つまって通じないという意味
着痺(だるい痛みや、重だるさが起こります)
湿には動きが遅く停滞する性質があるので湿邪による病は治りにくく、繰り返し再発するこどがあります。
・湿は脾胃を犯しやすい
脾は、陰土であり運化水湿の主要な臓器であり、性質は燥を好み・湿を嫌います。そのため、湿邪に犯されると消化吸収の能力を損ない、津液を運ぶ機能が
悪くなると下痢・尿量減少・水腫等の症状が発生します。
特に梅雨の季節は、湿が多い時期です。
自然界に湿が多いと、体の中にある余分な水分は外に出にくくなります。
体の水分代謝が上手くいっていれば、汗や尿として外に排泄出来るのですが
何かしら体に不具合が生じると、体内の水分を排泄できず結果、
湿が体に溜まり邪となり、体に悪影響を与えてしまうのです。
そもそも、東洋医学的に体内の水分を総称したものを「津液」と言います。
ここで津液について説明します。
津…体表部(皮膚・筋肉)を潤し、体温調節に関与し汗や尿となり排泄する
液…骨・臓腑・脳・髄などを潤す。
津液と臓腑の関係
津液(体内の水分)の代謝と運行には肺・脾・腎・三焦などの
臓腑が作用しているため、これらの臓腑の生理機能が失調しても、
あるいはどの臓腑間の協調関係が失調しても、津液代謝および運行失調が
引き起こされます。
脾・胃…飲食物より津液の生成
肺…脾から運ばれた津液を肺が、給水ポンプのように働いて全身に散布
↓
・腠理(毛穴)を開いて汗を出す。
・呼吸によっても体内の津液を排出します。
腎…蒸謄気化作用により全身に輸布
また尿として、膀胱に注ぎ全身の津液の代謝調節をしています。
津液代謝の失調と臓腑の関係
脾・胃
原因 ・食生活の偏り(甘いもの・添加物の入った食品・油の取りすぎ等)
・冷たい物の摂取
・ストレス(特に悩んだり・考え事が多いと失調しやすい)
↓
消化吸収機能が低下するため
全身倦怠感・腹が張りやすい・食欲低下・疲れやすい・めまい・下痢
むくみ・吐気等様々な症状が現れます。
肺
原因 ・クーラーによる体が冷えることによる発汗の減少
・梅雨の時季などで運動量の低下による汗の量減少
・★胃の機能低下による肺の機能低下
★脾・胃機能が低下することによって、湿を運ぶ能力が低下するため
水湿が滞り凝集してしまし徐々に湿を生み、痰を生じます。
その痰が、肺に運ばれ滞ると肺の機能が低下して「喘息」などの
症状が出ます。
また、肺に痰が滞るとアレルギー性鼻炎・喘息・蕁麻疹等の症状が現れます。
腎
原因 ・寝不足
・過労
これらの関係を踏まえまして、この時季の養生法をご説明します。
・夜は暗くなると共に寝て、日の出と共に起床
現代の生活スタイルですとなかなか難しいことですが
できれば12時前に寝れるとベスト
・暑いけれども怠けず、適度な運動をして
汗をかき、体の陽気を発散すること
夏の時季にしっかりと陽気を発散しないと、陽の気が胸にこもり
肺が良く働く秋になると、その熱によって肺が乾燥し、痰の少ない
空咳の原因ともなります。
・クーラーをなるべく控え、外気温に近い
生活を送り、肌の露出を避ける。
体を冷やすだけでなく、汗を止めてしまいます。
なので、この時季はシャワーで済ますのではなく、しっかりと湯船に浸かり
体を温めたり半身浴などで少し汗を出すこともオススメです。
しかしサウナなどは、体の水分を大量に失うため控えた方が良いと思います。
・冷たいもの・生ものは極力控える
・甘い物の取りすぎを控える
甘味は、体内に余分な水分をためこみ、熱をこもりやすくなります。