現代人の不足栄養素

厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準」によると、1日に摂取したい食物繊維の目標量は、18歳以上70歳までの男性では20g以上、女性で18g以上とされています。1950年代までは、意識せずとも20gをゆうに超えていた日本人の平均摂取量は年々低下し、今やこの目標量をクリアすることすら難しくなってしまいました。最近では平均して14g程度しか摂れていないという調査報告もあり、特に20代~30代にかけては、より顕著に不足傾向にあることが明らかになっています。また、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を2:1のバランスで摂るのが良いと言われていますが、現代人の食生活では3:1程度に傾きがちで、あまりバランスが良くないとも言われています。


食物繊維は第6の栄養素と呼ばれることもありますが、他の栄養素とは随分性質が異なります。どこが違うかというと、人間の消化酵素では、消化も吸収もできない成分であるということ。つまり、食べ物から摂取した食物繊維は消化されないまま小腸を通って大腸まで達し、便となって排出されます。食物繊維が不足すると、便の量も減り、便秘を引き起こしてしまうことに。さらには、食物繊維があれば良い働きをする腸内細菌が、食物繊維が不足するとたんぱく質などを分解するようになり、有害物質を生み出してしまいます。悪玉菌が増え、毒素がたまった腸をそのまま放置すると、大腸がんなどの重大な病気に繋がる場合もあります。そのため、たかが便秘と侮っていると危険です。近年、日本人の大腸がんの罹患率は増加傾向を辿っています。腸内環境を整えることは現代人の課題でもあるのです。

食物繊維とは…たんぱく質・脂質・炭水化物(糖質)3大栄養素の一つである、炭水化物の一種です。消化されずに大腸まで届くという特性をもっています。体内でエネルギー源にならないためカロリーはほとんどありません。大腸まで届いた食物繊維はそこで腸内環境を整える働きをしてくれています。

水溶性食物繊維
・食後の血糖上昇を緩やかにする
・余分なコレステロールを体外に排出する
・消化の速度を緩やかにする

果物(みかん、りんご)
芋類(里芋、さつま芋)
海藻類(昆布、わかめ)
キャベツ、大根

不溶性食物繊維
・便のかさを増やす
・腸内環境を整える
・腸を刺激して便の排泄を促す

・穀物(玄米、ライ麦)
・野菜(根菜類、きのこ類)
・豆類(大豆)


食物繊維は、腸内環境を整えることや便秘予防に役立つだけではありません。様々な研究で、肥満や糖尿病、高血圧、心臓病など生活習慣病の予防にも効果があることが指摘されています。ただ、食物繊維と一言にいっても、様々な種類があり、その働きも一様ではありません。健康維持のためには、同じ種類の食物繊維に偏らず、多様性を大事にして、色んな食べ物から食物繊維を摂ることをおすすめします。

2023年04月03日