開業して分かった修行の意味 静岡市 鍼灸院
開業して初めて分かった修行の意味
開業して数か月、そして一年、二年と時間が過ぎるにつれて、
不思議と修行時代の出来事を思い出すことが増えました。
修行中は、本当につらい毎日でした。
毎日のように怒られ、
「帰れ」
「手を早く動かせ」
「集中しろ」
「暴走するな」と言われ続けていました。
その当時の私は、「なんでそこまで言われなければいけないんだ」「理不尽だな」
と思うことも少なくありませんでした。
目の前のことをこなすだけで精一杯で、
その言葉の意味を考える余裕などありませんでした。
しかし、自分で治療院を開業し、
患者さんからお金をいただいて治療をする立場になって初めて、
その言葉の重みを実感するようになりました。
患者さんに安心して治療を受けていただくこと。
信頼していただくこと。
そして結果を出すこと。
その責任は、自分が思っていた以上に大きなものでした。
特に開業当初は、
「何とか楽になっていただきたい」
「少しでも満足して帰っていただきたい」という気持ちが強くありました。
その気持ちが強すぎるあまり、
必要以上に時間をかけてしまうことがありました。
「もう少しここも治療しよう。」
「ここも気になるから診ておこう。」
そんな思いで施術を続けた結果、
「治療後に痛みが強くなった。」
「身体がだるくなった。」
という経験もしました。
もちろん鍼灸には施術後の反応が出ることもあります。
しかし、それとは別に、自分が患者さんへ必要以上の刺激を
与えてしまっていたことにも気付かされました。
そこで初めて、「手を早く動かせ」という言葉の意味が分かりました。
これは、雑に治療をしろということではありません。
必要な刺激を、必要な分だけ与える。
余計な刺激を減らし、
患者さんの身体への負担を少なくするための教えだったのです。
そして「集中しろ」という言葉も、今ではその意味がよく分かります。
集中力が切れると、患者さんの小さな変化を見逃してしまいます。
鍼の抜き忘れがないか。
お灸による火傷の危険はないか。
患者さんの表情や反応はどうか。
集中することは、患者さんの安全を守ることにつながります。
そして、今でも私が一番大切にしている言葉があります。
「暴走するな。」
これは今でも、自分自身に言い聞かせている言葉です。
忙しい時ほど、人は視野が狭くなります。
予約時間、電話対応、次の患者さん…。
目の前のことだけを追いかけていると、
気づかないうちに判断が鈍り、普段ならしないようなミスにつながってしまいます。
だからこそ、忙しい時ほど一度立ち止まり、自分に問いかけます。
「落ち着いているか。」
「患者さんをちゃんと見ているか。」
「自分本位になっていないか。」
その一呼吸が、とても大切だと感じています。
開業して数年が経ち、修行時代に教わったことが、一つひとつつながってきました。
治療技術だけではありません。
患者さんとの接し方。
院内の雰囲気づくり。
仕事への姿勢。
そして、経営者としての責任。
修行中には理解できなかったことが、今では
「あの時教わったのは、このことだったのか」と思う場面ばかりです。
今でも迷うことはあります。
治療に正解はありません。
だからこそ、迷った時には原点に戻るようにしています。
これまで出会った先生方、患者さん、そして多くの経験が、今の私を支えてくれています。
鍼灸師になって終わりではありません。
開業して終わりでもありません。
患者さんと向き合う限り、これからも学び続ける気持ちを忘れず、
一人ひとりと真剣に向き合っていきたいと思っています。